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成年後見制度改革試案

2010-11-22
成年後見
成年後見制度がスタートしてから、今年でちょうど十年になる。同じ年に始まった介護保険が普及しているのに比べると、大きく後れを取っている感を否めない。ドイツにおけるこの制度にあたる世話人の利用者は、8200万人の人口に対して約120万人だが、日本では1億2000万人の人口に対してせいぜい12万人程度である。宣伝が不十分で国民に周知されていないなどの問題点も指摘されているが、理由はそれだけではないことは明らかである。
ちなみに私の両親も高齢(80台と90台)で、二人とも大分耄碌しはじめており、すでに2度も消費者被害に遭っている。1件は、クーリングオフで何とか解決できたが、もう1件では結局24万円の損害が出てしまった。これ以上の被害を喰いとめるためには、この制度を利用し取消権を行使するしかない。私は仕事で後見人になった経験があるが、しかし、自分の両親に対してこれを使う気にはなれない。それは、次のような理由による。
成年後見制度には、後見、保佐、補助という三つの類型があるが、後見の場合は、上述したように取消権が行使できる。24万円の被害に遭った先のケースは、消費生活センターの職員が匙を投げてしまった程、ヤクザまがいの業者が相手であった。法律的な話が全く通用しない者に対して示談することは所詮無理だし、たとえ裁判を起こして勝ったとしても、相手方の金融機関の支店名までを自力調査しなければ、強制執行できない。また、振り込め詐欺グループなどの場合、住所を転々と変えるので、内容証明や裁判所の特別送達を送ることすら困難な場合もある。取消権を得たとしても、これによって問題解決できるという保障はどこにもないのである。
また、成年後見の利用が開始されると、家庭裁判所に定期的に業務報告をしなければならない。この報告書の中に、財産目録と収支報告書が含まれるが、これはBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)と同じ仕組みになっている。要するに、複式簿記の作成を求められるのである。確定申告の時、小さな会社や個人事業の場合、単式簿記でも提出できるのに比べると、後見人の事務負担は大きいと言える。単式簿記なら家計簿と一緒で誰でもできるが、複式簿記は経理の知識がないとできない。義務教育で簿記を教えてくれるわけでもないのに、このように煩瑣な財産管理を要求するのは無茶ではないか。
要するに、現在の成年後見制度は、メリットに比べ負担が大きすぎるのである。故に、施設入所などの特別な事情でもなければ、あえて利用しないと考えるのはむしろ当然のことなのだ。利用促進のことを考えるなら、メリットとデメリットの関係を逆転させなければならない。すなわち、利用によってもたらされる効果を高め、負担を軽減させることである。

そこで、次のような改革案を提言したい。
まず、被後見人等が消費者被害に遭った場合、単に民事上の取消権の請求だけではなく、捜査機関が強力にバックアップするような体制を整える。さらに、刑法改正により特別詐欺罪のような規定を設け、被後見人に対して詐欺行為を働いた者に対しては、通常より重い刑罰を科すようにする。弱い者から金銭を巻き上げた者がより厳しく罰せられるというのは、国民の道徳感情とも一致するし、振り込め詐欺の撲滅にもつながれば一石二鳥と言えるのではないか。ついでに言えば、消費生活センターに特別司法警察職員を配置し、悪質な業者に対しては強制立入調査を行い、刑事告発するような体制を整えるべきである。今の状態では、消費生活センターは悪党連中からなめられっぱなしである。
また、後見人が親族の場合、推定相続人の同意等の条件をつけ、財産管理の報告を単式簿記に簡略化する。これによって後見人の負担は、大幅に軽減されるはずだ。
被保佐人や被補助人など、軽度の人の場合行動範囲も広く、その分騙される機会も多い。こういったケースにおいては、一定金額等の条件を付けた上で、後見の場合と同様、包括的に取消権を行使できるようにする。
成年被後見人の選挙権の喪失は取りやめる。成年後見制度が基本理念としてノーマライゼーションを掲げている以上、成年被後見人から選挙権を奪うことは自己矛盾と言うより他ない。
問題点は他にもあるが、とりあえずこれらの点を改めれば、かなり魅力的な制度に変わっていくのではないか。


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