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インターネット陰謀論(4)

2014-08-11
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4.  ドキュメンタリー「アメリカ監視社会の実像」
ちょうどこの原稿を書いている最中、BSドキュメンタリー「アメリカ監視社会の実像」が3回に渡って放送された。なかなかよく出来たドキュメンタリー作品で、スノーデン以前にも、元NSAの幹部職員による内部告発が「ニューヨークタイムス」に掲載されたことなどが紹介されている。しかし、この元NSA幹部の告発は匿名だったこともあり、結局ブッシュ大統領にうまく言い逃れされてしまい、大きな事件にはならなかった。スノーデンはこの事例に学び、あくまで実名告発にこだわり、なおかつ膨大な証拠書類の収集に努めたのである。
さらにこのドキュメンタリーでは、NSAとIT企業との癒着についても着目している。百年以上も政府との深い関係のある電話会社(AT&T)は別として、新興のIT企業はNSAの協力要請に応じるには応じたが、仕方なくやったのだと結論付けている。しかし、このような話を額面通りに受け止めるわけには行かない。第一取材を受けて、積極的に協力したなどと言えるわけがないではないか。また、取材が行われた時点においても、政府による圧力は続いていたと考えるべきである。
この番組では、ある中小IT企業に、突然NSAからの協力要請の手紙が届き、経営者はこれが義務なのかと不審に思い、弁護士と相談した上でNSAを訴えたことが紹介されていた。しかし、巨大IT企業の場合、もっと利害の一致した深い結びつきがあったと考えられる。このような事例を一般化することによって、かえって巨悪の存在を見えにくくしているのではないかと思う。

筆者に言わせると、意図的であったかどうかは別として、このドキュメンタリーには、一定のバイアスがかかっているように見える。例えばそれは、事件全体を、時間的にも空間的にも小さく見せようとしている点である。すべては9.11から始まり、監視はあくまでアメリカの国内問題であった、という制作者側の視点が見え隠れするのだ。すなわち、9.11の同時多発テロにより、ブッシュ大統領による愛国者法が成立してからというもの、NSAは異常な雰囲気に包まれ、裁判所の令状もなしに一般市民の電話やメールを盗聴することによってついに法律の一線を踏み越えてしまった、というわけである。裏を返せば、9.11さえなければ、このような問題も起こらなかったということになる。
果たして本当にそうだろうか。
この番組でも、「暴露-スノーデンが私に託したファイル-」の著者、グリーンウォルドへのインタビューが度々登場するが、彼の視点は、これとは全く異なる。例えば、
「十八世紀、こうした議論の対象となったのは主に家宅捜査だった。が、テクノロジーの進化にともない、監視手段もまた進化する。十九世紀半ば、鉄道の普及とともに安価で迅速な郵便配達が行われるようになると、イギリスではひそかに郵便物を開封し……アメリカでは、二十世紀初頭になっても捜査局(FBIの前身)が電話盗聴、郵便監視、情報提供者と言った手段を使って政策に反対する人々を取り締まっていた」(同書)
グリーンウォルドは、政府による個人情報の監視は今に始まったわけでなく、伝統的手法だったと言っているのである。
また、アメリカの国内問題だったという点についても、グリーンウォルドは懐疑的である。例えば、オバマ大統領はインタビューの中で、「もしあなたがアメリカ合衆国の国民であれば、NSAがあなたの電話を盗聴することなどありえません」と述べたが、これはかえって世間からの非難を浴びることとなる。これに対してグリーンウォルドは、「これはいささか奇妙な弁明と言える……外国人にかぎってプライバシーを侵害します」(と言っているのに等しい)と述べている。
また、「暴露」に公開されたスノーデン・ファイルの中には、「ファイブ・アイズ」(5つの眼)という言葉が頻繁に登場する。これはアメリカに加え、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった英連邦の国々のことをさし、すなわち監視する側の諸国のことを意味する。最近は、これにイスラエルが加わったとされているが、日本は安保条約があるにもかかわらず、あくまで監視される側の一員なのだ。「ファイブ・アイズ」という言葉は、1ドル札にデザインされたピラミッドの目を彷彿とさせる。
奇妙なことに、この番組では、「ファイブ・アイズ」について一言も触れていない。それは、先程の視点と齟齬が生じてしまうからであろう。すなわち、18世紀以来イギリスやその植民地だった諸国が世界中の国々に対して監視活動を行ってきたという長いスパンにおける見方と、9.11の愛国者法による国内テロの監視という一時的な問題とする見方との間には大きな開きがあるからだ。
筆者は、前者の一環として後者があったと信ずるが、その場合、スノーデンの告発によって明らかにされた事実は、氷山の一角にすぎないということになるだろう。とりわけ、日本においては、三沢基地にエシュロン施設があることは暗黙の事実であり、無線や携帯電話、インターネット回線に対する通信傍受は、恐らく今現在も行われているのである。アメリカの一時的な国内問題として片づけられてしまってはかなわない気がする。

よく「アメリカは世界の警察」などと言われるが、インターネット等における監視活動も、世界戦略の一環と見るべきであろう。しかも、インターネットはもともと軍事技術だったのである。さらに辿れば、このような情報戦略のルーツは大英帝国にあった。アメリカが暗号解読に本格的に取り組み出したのは第二次世界大戦直前の頃であり、日本と大差ない。それ以前は圧倒的にイギリス優位の時代であり、英国の暗号解読者として活躍したアラン・チューリングなどは、後にコンピューターの父とも言われる。
だから、「ファイブ・アイズ」もすべて英連邦の国々であり、イギリスの影響力が色濃く感じられる。この世界戦略がなんであるかは筆者の想像を超えるが、少なくも監視活動はそのような文脈で捉えるべきで、世界をどのように動かし導こうとしているのかという、隠された意図をしっかり読み解いていくべきなのだ。
すべてが、9.11に始まったわけではないのである。


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